「性の不一致・セックスレス」について当事務所より
離婚の危機に陥り当事務所を訪れるのは、ほぼすべての方が「性の不一致・セックスレス」状態です。その原因は、男性女性を問わず「性的無知」にほかなりません。
「性」の問題は、大変デリケートです。が、それ以前に、寝室が「夫婦別室」だったり「夫婦と子どもが同室(いわゆる川の字状態)」の方が多いのに驚いています。まして、「奥さんと子どもが同室で、ご主人は一人別室」など論外でしょう。
ご主人よりお子さんを大事にしている奥さんは、必ずと言っていいほど「性の不一致・セックスレス」の問題を抱えています。奥さんのヒステリー、ご主人に対する暴言・無視等の根っこにあるのは、「性的欲求不満」であることが多いのです。
また、ご主人の方も、アダルトビデオや週刊誌の記事のように、奥さんに対して自分勝手なセックスをして、奥さんを幻滅させていることに気づいていませ ん。セックスの時に、奥さんが苦痛にゆがむ顔を「感じている」と信じて疑わない男性は、横暴以外のなにものでもないでしょう。
「性」の問題を抱えているご夫婦は、多いと思われます。が、誰かれにでも相談するわけにいきませんし、「こんなことを口に出すのは恥ずかしい」と思ってしまうのも、よくわかります。
当職は、精神分析を受けた知識と、前職であるカウンセラーの経験を生かし、「性」の部分についても、ご相談をお受けしております。
存分にお話しください!
性の不一致・セックスレスの実例
信二さん(仮名)は、40歳代の会社員。妻と小学生の子どもとの3人家族。妻のヒステリーに悩んで来所された。
元々妻は気が強く、完璧主義なところがあり、家事も子育ても自分の限界まで頑張ってしまう。
妻は、自分の思い通りに事が運ばないとイライラしている。私は晩酌をするため食事時間が長いのだが、片付かないから早く食べろと言う。家では楽しいお酒が飲めない。外で飲むと、家計に響くと小言を言う。
何かにつけて、いちいち文句を言ってくるので、口喧嘩が絶えない。子どもは、それを見ている。
子どもが近頃、学校に行きたがらない。よく泣くようになった。
先日、妻が「離婚したい。私と子どもがこの家に残るから、アンタが出て行って」と言った。「離婚なら、お前が一人で出て行け!」と言い返し、ここ数日というもの無言状態が続いている。
子どもがかわいそうなので離婚は避けたい、とのことであった。
信二さんからは「離婚する場合、養育費はともかく慰謝料を請求されたら払わなくてはいけないのでしょうか」。また、「妻のヒステリーをやめさせるにはどうしたらいいですか」と相談を受けた。
残念ながら、他人を変えることはできない。できるとすれば、自分が変わることによって、結果として他人も変わるということだけである。
日常生活の事情を聞いてみると、信二さんは、朝早くから晩遅くまで仕事に忙しく、家庭のことは妻に任せきりであった。
妻に子どものことを相談されても「お前に任せる」としか言わなかったし、妻と向き合って話したこともなかった(むしろ、逃げていた)らしい。
また、寝室は親子同室(子どもが真ん中の川の字状態)で、夫婦生活はほとんどないとのこと。
当職は、妻のヒステリーは性的欲求不満であることを告げた。信二さんはビックリしていた。「妻は、いつも拒否をするのですよ」と。拒否されるから、誘う気もなくなっていったらしい。
当職は解決策として、以下の点を挙げた。
1. 寝室は夫婦同室とし、子どもは子ども部屋で就寝させ自立を促すこと。
2. 健全な夫婦生活を営むため、一方的なことはせず、奥さんを満足させてあげてほしいこと。性的会話を、夫婦でおおいに交わしてほしいこと。
3. 休日は子どもと遊び、父親の逞しさや頼もしさを感じさせてあげてほしいこと。
4. 奥さんと向き合い、しっかり話しを聞いてあげてほしいこと。その際、意見するのではなく聞き役に徹してほしいこと。「よく頑張ってくれているな」「ありがとう」と受け止めてあげてほしいこと。
5. 食事時に、奥さんの手料理を「美味しい」と言ってほしいこと。
「なるほどとは思うのですが……」と多少不満そうであった。「自分だって仕事に忙しいのに、家でも妻の顔色をうかがわなくてはいけないのか」ということなのだろう。
しかし、家庭を持つということは、妻(夫)に対して責任をとるということなのだ。まして、子どものことについては、親は全責任を負わなければならない。
妻は、夫の母親でもなく、お手伝いさんでもないのだ。
妻として、子どもの母親としての役割を期待するのであれば、自分が先に、夫として、子どもの父親としての役割を果たす必要がある。
当職は、「あなたが変われば、奥さんも変わりますよ」と、お会いするたびに言っていた。信二さんは、仕事が忙しいと言いながらも、ほぼ毎週のようにカウンセリングを受けに来られ、時には、当職と大論争になった。平日の夜は、10時11時に及ぶこともあった。
信二さんの自由連想は、現在の家庭のことだけでなく、生家の環境、実親・兄弟との関係にまで及んだ。人生を振り返ることにより、彼は改めて、妻との生活を立て直すことにしたのだ。
信二さんには毎回、妻を喜ばせるセックスカウンセリングを行った。セックスは男性のためにあると思っていた信二さんには、衝撃的だったことだろう。しかし、「女性のことは、女性に聞くのが一番」と当職を信頼していただき、
カウンセリングが進むにつれ、質問が増えていった。
信二さんが家庭に目を向けるようになってから、徐々に妻の態度が変わり始めた。夜の生活も回数が増え、気楽に話せるようになった。子どもの笑顔が増えた。食卓には、信二さんの好物が並ぶようになった。
信二さんのカウンセリングは、6ヶ月(19回)で終結した。
最終日、信二さんの言葉が忘れられない。
「半年前、先生に出会えなければ、おそらく離婚していました。今頃は、養育費の支払いに追われていたかもしれません。『妻が自分の悪いところを直してくれ れば』と思っていましたが、私が妻を押さえつけていたのかもしれませんね。今は『自分が変わらなくては、相手は変わらない』という先生の言葉が理解できま す。これから、妻と子どもを大切にし、守っていきます。」
カウンセラー冥利に尽きる言葉である。当事務所を後にする信二さんの後姿を見送って、胸が熱くなった。
納得できないことは当職に反論しながらも、自分の至らなかったところは改めるという、素直で真剣な姿勢を貫かれた。
このような方は、夫婦関係を修復できる可能性が高い。
夫婦は、何十年もの間、寄り添っていくものである。逃げていては、信頼関係は築けない。
夫婦は、かつて「結婚する」という大きなハードルを乗り越えたのだ。そのときの情熱を思い出し、今からやり直すのも決して不可能ではない。
当職は、それを信じて、悩める方々の気持ちに寄り添っている。