「離婚の金銭問題」について当事務所より
離婚をするにあたり、最も大きなハードルの一つが、金銭問題です。「財産分与」「慰謝料」「婚姻費用」「養育費」等さまざまな問題を、ひとつひとつクリアしていかなくてはいけません。
当然ながら、お金を払う方(だいたい男性)は、なるべく払いたくないし、お金を受け取る方(女性が多い)は、できるだけ多く払ってもらいたいと思っています。
一方が「これだけ払ってもらえるのなら、離婚してもいい」と思えるだけの金銭を用意できるのであれば、そんなに争いにならないでしょう。が、そのようなケースは、少数です。
お金のことだけを考えるのなら、離婚しない方がいいのです。それでも、離婚を考えるのは、お金よりも優先することがあるからでしょう。
財産分与、慰謝料の名目で一時金が支払われたとしても、思うほど大金ではありません。書面で、養育費の取り決めとしたとしても、確実に支払われる保障はなく、将来的に支払われなくなるケースも少なくないのです。
離婚すれば一時、精神的には楽になれても、経済的に大変苦しくなるのは確実です。特に、就学前のお子さんがいる場合には、お子さんの将来(進学費用等だけでなく人格形成についても)を、すべてを背負う覚悟が必要でしょう。
当職は、ファイナンシャル・プランナーの資格も所持しています。
離婚後のライフプラン、保険や年金のことについてもアドバイスします。お金は大変シビアな問題ですが、離婚するのなら、しっかり計画を立てることが大切です。
離婚の金銭問題の実例
留美さん(仮名)は、40歳代。
パート勤務。夫と大学生の息子との3人家族。
離婚について相談にのってほしいとのことで、当事務所にみえた。
10年ほど前から、夫との関係がギクシャクしているという。男尊女卑の考えが基本にある夫とは、話し合いをしても平行線であり、やがては怒鳴り合いになってしまうらしい。それを、息子さんの前でやっていたのだから、息子さんにとっては、辛い思春期だったことだろう。
夫は、離婚は望んでいない。ならば、少しは留美さんに歩み寄っても良さそうなものなのだが、夫は「離婚はしない。お前が俺に合わせればよい」の一点張りであった。
当職は、夫を変わらせるのではなく自分が変わるべきであること、息子さんが大学を卒業するまで、あるいは成人するまで離婚を見合わせた方が良いのではないかと告げた。
以降、留美さんからの連絡は途絶えた。後日聞いたのだが、離婚しようとして相談に行ったのに、当職から修復をすすめられて、うつ状態になってしまったら しい。当職は、助言の方向性が違ったことと、留美さんの心の底にある悩みに寄り添えなかった力量不足を悔やみ、身を引くことにした。
3ヶ月後、突然留美さんから連絡をいただいた。離婚することを決意し、夫も了承したので、離婚協議書を当職に作成してほしいと言う。
電話で離婚協議書に盛り込む内容を大体お聞きして、協議書案を作成し、数日後留美さんとお会いした。3ヶ月前とは別人のような、迷いのない目をした彼女がそこにいた。
電話でお聞きした解決金(慰謝料)の額は、当職から見てもかなりの額であった。しかし、二人で合意した額なら、当職が口を挟むべきではない。
離婚協議書の内容には、息子さんの親権・学費の支払い、解決金(慰謝料)の支払い方法・期日、家の処分、年金の離婚分割・3号分割等を考え、将来予測されることで出来るだけ問題が起きないよう、細心の注意を払った。
数度のやり取りを経て、二人の最終合意を得、双方が離婚協議書に署名捺印した。後日、公正証書を作成し、当職は夫の代理人として留美さんと公証役場へ赴いた。
留美さんは職場で、誠実な勤務態度が上司に認められ、パート勤務から正職員に昇格した。現在は、主任を務めている。